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特集1 魅力を探る「おおいたの魚」
【PDF版】新時代おおいたNo.122 [PDFファイル/8.17MB]
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広瀬知事 明けましておめでとうございます。本日は、東京海洋大学名誉博士さかなクンにお話を伺います。
さかなくん ギョギョギョ!! さかなクンです。明けましておめでとうございます。とても楽しみにしていました。
広瀬知事 さかなクンは、全国にある漁業の街を訪ねて、旬の魚や郷土料理を食べ歩かれているそうですね。大分の海や魚にはどんなイメージをお持ちですか?
さかなくん 年に10回は大分に来ています。大分の海は山々に囲まれ、小さな魚から大きな魚まで、本当に素敵な魚介類がいっぱいで宝の海だなという印象です。
全国有数の養殖生産地おおいた
広瀬知事 うれしいですね。少し自慢させてもらいますと、大分県は、豊前海、豊後灘・別府湾、豊後水道のリアス式海岸と特色ある好漁場に恵まれていて、バラエティに富んだおいしい魚がたくさん獲れるんですよ。
さかなくん 関あじ、関さば、城下かれいなど、 代表的なお魚がいっぱいありますよね。
広瀬知事 よくご存じですね。また、漁船で獲るだけではなく、地形や気候を活かした養殖業も盛んで、全国でも有数の養殖の産地でもあります。
さかなくん お魚だけでなくアコヤ貝の真珠養殖でもすばらしい賞を受賞されていると聞きました。美味しいお魚だけでなく真珠まで…もうシンジュ(信じ)られないですね。
先程、重宝水産(臼杵市)の養殖場に行ってきました。かぼすブリちゃんもすごいですね。ほんとに元気に食事をしていました。エサも見せていただきましたが、かぼすを惜しげもなく使っていて、柑橘類の良い匂いがしました。
エサをあげている漁師の方は、「まだ食べたい?」「おなかいっぱい?」と魚と会話をしながら量を調節していました。食べ残すと海を汚してしまうと言うことで、環境にも気をつけて育てているのだと、とても感動しました。
広瀬知事 特に、豊後水道に面した佐賀関から南は、美しいリアス式海岸が続いており、波や風の影響を受けにくいという特徴を活かして、魚類の養殖が盛んに行われています。中でも、先程見ていただいたブリの養殖が盛んで、全国2位の水揚量なんですよ。
さかなくん 重宝水産の社長さんにお伺いしましたが、かぼす入りのエサを与えると、脂がのっているのにしっとりとした味わいになって、いくらでも食べられるということでした。
広瀬知事 ブリは、刺身にすると血合いの部分が早く変色して見た目が良くないという課題がありました。そこで、県の農林水産研究指導センターで柑橘系の抗酸化作用を持つ大分の特産品「かぼす」をエサに加えたところ、見た目も良く、爽やかな風味の「かぼすブリ」が誕生しました。
かぼすブリが「味よし、香りよし、見た目よし」と言われる所以です。
さかなくん そんなに変わるものなんですね。美味しいお魚は、美味しい物を食べているからこそ美味しい訳ですね。
広瀬知事 そうですね。そこで、「これはいいや」ということで、ブリだけでなく、ヒラメやヒラマサにも同じように「かぼす」を使って育てています。ブリ・ヒラメ・ヒラマサで、「かぼす三兄弟」と呼んでPRしています。
さかなくん すごいですね。だんご三兄弟の次は「かぼす三兄弟」ですね。かぼすをヒラメにもという、そのひらめき、これがすギョい(凄い)です。
海を守る資源を守る
さかなくん 漁師の皆さんが日々、美味しいお魚を獲って私たちに届けてくれるのは本当にありがたいことです。豊かな海や川があってこそ、私たちが美味しいお魚を食べることができるのだなと思います。けれども、自然界のお魚は、やはり獲れる数に限りがありますので、獲る量をしっかりと定めたり、魚の種類によっては産卵期に、獲らないようにするといった禁漁期間を設けることも大切です。
かぼすブリちゃんをはじめ、水産の中では養殖業も、非常に重要だと考えています。漁獲可能量を制限するTAC(*)と呼ばれる制度もありますので、その中で取り過ぎないようにしながら、漁獲量を確保するためには、養殖というのは非常に大切だと考えています。
広瀬知事 漁業関係の方たちも資源を守るという考えを非常に強く持っていらっしゃいます。県でも、産卵地域や産卵期間を調査して、禁漁の期間等を地元の方たちと話し合いながら、資源を守る活動を進めているところです。稚魚の放流も行っています。自分たちでできること、大分県内でできることはしっかりとやっていくことが大事ですね。
ただ、魚は県を超えて回遊しますから、全国的に漁獲可能量を決めたりして、みんなで守っていくと言うことも大事ですよね。
さかなくん 本当にその通りです。漁獲可能量が設けられているのは、クロマグロ、マイワシ、マアジなど、私たちにとって、とても重要な食卓に上がるお魚です。
しかし、それ以外にも、実は日本近海には、4000種類もの魚がいます。一つ一つのすべての魚を守る、海を守るというとなかなか難しいことのように感じますが、山も川も海も森もつながっているので、まずは身近な自然に目を向けて、大切にしていくということが大事なのではないでしょうか。
広瀬知事 本当にそうですね。「森は海の恋人」という言葉があります。
県北には姫島という島があって、明治頃、矢筈岳という草木が生育していない山に植林を行ったところ、森が生き返ったからでしょうか、海岸に魚が戻ってきたという話があります。そういう効果があるんですね。また、最近では、津久見市の四浦半島で漁師さんや地元の皆さんが「河津桜」の植林活動を行っていて、海も豊かになり、桜の時期にはたくさんの観光客も訪れるという、一石二鳥も三鳥もの効果が現れています。
大分では、植樹祭とか、森を造るための植林を行う際、漁師の方たちが大漁旗を掲げて手伝いに来てくれるんですよ。森が海とつながっているというのを実感しているのではないでしょうか。
さかなくん 素晴らしいですね。「森と海のつながり」大切ですね。このつながりが、しっかりと築かれると私たちもうれしいです。
リアス式海岸というと三陸のイメージが強かったのですが、大分県にも、こんなに豊かで美しいリアス式海岸があるなんて本当に目からうろこです。
海もきれいで、山もきれいで、魚も美味しい。猫も鳥も元気で、すべてが生き生きして本当に素晴らしいです。
今日は、たくさん大分の魅力、水産について教えていただいて、私もますますお魚に、漁師さんに、海に、自然に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。これからも「さかなクンも頑張らなきゃ」と引き締まった気持ちになりました。ありがとうございました。
広瀬知事 うれしいですね。さかなクン、これからも是非、大分を応援してください。
また、県民の皆さんには、是非、日頃から美味しい大分の魚を食べていただきたいですね。そして美味しい魚を提供してくれる漁業者や生産者を応援してもらいたいと思います。
ありがとうございました。
(*)TAC(total allowable catch)
総漁獲可能量。水産資源の保護管理のため,ある海域の魚種別の漁獲可能量を科学的に測定し,それによって漁獲総量を規制するもの。
ワクチンによる魚病発生予防の徹底
魚類養殖が盛んな大分県。安全な養殖水産物を安定的に供給するため、様々な取組を行っています。抗菌剤の使用を最小限とする魚病対策とその普及啓発活動もそのひとつで、30年以上にわたり実施しています。
地道な活動が実を結び、現在養殖魚はワクチンが普及し、薬剤の使用は以前に比べ著しく減少しました。
昨年この活動が認められ、10 月には第2回薬剤耐性(AMR)対策普及啓発活動表彰において、農林水産大臣賞を受賞しました。
緑色LEDで養殖ヒラメの成長を加速
緑色LED光の照射で、ヒラメの成長促進効果を検証する実験も行っています。
本県では、ヒラメ養殖業は海沿いの陸上施設で行われています。通常は水槽の底でじっとしているヒラメが、緑色LEDを照射した水槽では、光を当てると徐々に遊泳を開始します。餌食いが落ちる低水温期でも良く餌を食べ、LEDを照射しないヒラメに比べると平均体重は1.6倍まで増加しました。
今後、最小限の投資で大きな収益が得られる方法を研究し、養殖現場への普及を目指していきます。