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新時代おおいたNo.110

印刷用ページを表示する掲載日:2017年1月20日更新

表紙

【HTML版】
特集1/新春対談~ロボットとミライ社会~
特集2/おおいたから羽ばたくアスリートたち
風紋/鏡三題
県民ひろば1/命を救うボランティア 献血に行こう!
県民ひろば2/たくさん食べよう!毎月第4金曜日は「おおいた県産魚の日」
おおいたゆかりの図書 心ひらいて とよの国の食彩   

【PDF版】
新時代おおいたNO.110 [PDFファイル/6.35MB]

【電子書籍版】
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 特集1 新春対談 ロボットとミライ社会  

 【対談者】

国際電気通信基礎技術研究所客員所長
大阪大学教授・ロボット工学者
石黒 浩さん

大分県知事 広瀬 勝貞

対談

ロボット開発を通して人間を知る

広瀬 あけましておめでとうございます。 今日は、国際電気通信基礎技術研究所客員所長で大阪大学教授の石黒浩さんにお話を伺います。

ATR
京都の国際電気通信基礎技術研究所、通称ATR。
情報通信関連分野の一大研究拠点。

 科学技術の成果というと普通は何か未来をつかみ取ってくるような期待感が持てるんですが、このロボットも大きな期待感と同時に、人間の世界をつかみ取られるような警戒感がありますね。

石黒 人間にそっくりですから、人間に取って代わってしまうことを予感させるのかもしれません。ただ、新しい技術が人間の仕事と代わって、人間はその技術を使ってより効率のいい仕事をするということを繰り返すのが、人類の歴史ですからね。

広瀬 石黒さんがこういう研究をしてみようと思ったきっかけは何ですか?

石黒 僕自身は、たまたまコンピュータや人工知能を勉強していて、それらがどこまで人間らしくなるのかということに興味を持ちました。コンピュータからロボットに入ったのは、身体を持たないコンピュータは自分で経験ができないけれど、ロボットなら経験ができるから、知能って何だろうということをより考えやすいかなと。ただ、正直ロボットよりもむしろ人間に興味があったので、人間そっくりのものを作って人を理解しつつ、ロボット開発に生かせる知識を得たいと思っています。

広瀬 確かにロボットを作るとなると、人間が喜怒哀楽をどう感じてどう表現するのかという人間学そのものにつながりそうですね。

石黒 僕らの研究や論文も、認知科学や心理学の分野の研究と関わるものが結構多いです。他の動物と比べて非常に大きな脳を持っている人間が、なぜ自分たちが生きているのか、生きる目的は何なのか、人間とはそもそも何なのかと考える。そういった「人のことを知りたい」というのは、人間の最も根本的な欲求だと思います。

人間とロボットの関係

 広瀬 学生さんたちは、石黒さんにそっくりの遠隔操作型アンドロイドであるジェミノイドHI–2に「イシグロイド」と名前を付けているそうですね。もし、自分に似たアンドロイドがいたら、私もヒロセロイドと名前を付けて無性に腹が立った時や落ち込んだ時に相手になってもらえれば、話をしている内に気持ちが落ち着くように思います。アンドロイドと友達になれるというのはいいかもしれませんね。

イシグロイド
ジェミノイド™HI-2の横顔。
肌の質感までまるで本物のように精巧。

石黒 そうですね。特にご高齢の方は、人間よりもロボットの方が話をしやすいということが多いですね。対話を通して元気になってもらうという目的で開発した「テレノイド」というロボットは、高齢者施設などで実証実験に使われています。

テレノイド
自分の好きな相手を想像して話ができるテレノイド。
実験で効果の高さが実証されている。

広瀬 子ども向けにも人形のように抱っこすると、気持ちが落ち着くロボットがあるそうですね。

対談

石黒 スマートフォンと組み合わせて使う抱き枕のような「ハグビー」という、もっと簡単なロボットです。それを幼稚園から小学校に上がって集団生活に慣れない1年生の子どもたちに渡して、先生の声が聞けるようにすると、先生の存在を強く腕の中に感じながら話をすることができ、科学的にもストレスホルモンが減ることがわかっています。人の存在感を伝えるのは大事なことですね。

 その他にも、人間国宝である落語家の三代目桂米朝師匠の名人芸を後世に伝えるために、何か工夫がないかということで師匠のアンドロイドを作らせてもらいました。ビデオだと人の存在感が伝わりませんが、アンドロイドだと師匠が公演されている感じが再現できます。今でも公演をしているそうで、人気があるんですよ。

広瀬 お弟子さんもいいですよね、師匠の姿を見て勉強になる。

石黒 でも、ステージの裏にアンドロイドがいると皆さん緊張されますよ。じっと座られていても師匠は師匠だからと。

広瀬 そういった素晴らしい機能の一方で、昨年はアルファ碁という人工知能が、世界の囲碁チャンピオンを打ち負かすという衝撃的な事件がありました。ロボットの世界を手放しで喜んでばかりもいられないなとも感じます。

石黒 囲碁というのはしょせんボードゲームなので、ありとあらゆる盤面を記憶して大きなコンピュータで早い計算ができれば、いつかは勝てるとわかっていました。対戦中、人工知能はそれほど難しいことを考えているわけではなくて、膨大な試行錯誤をしながら、ここに打てば勝つだろうということを繰り返し行っているだけなんです。だから人間のような思考ができているわけでは全くないし、アルファ碁がなぜ勝ったかは誰にも説明できない。そういう意味で人間とアルファ碁の知能にはまだ格段の差があって、囲碁に勝っても人間に迫ったわけではないと僕は思いますね。

広瀬 技術が我々の世界を広げてくれているんだけども、それによって人間も心がけを進歩させていかないと、引きずられてしまいそうですね。

石黒 技術は人間の限られた能力をどんどん拡張するためにあるのですが、新しい技術を理解しないとその技術を使えないし、むしろ使われてしまうんじゃないかという恐れが出てくるのはわかります。だから、教育が大事なんですね。かつては読み書きができればよかったけれど、今はいろんなことを勉強して、コンピュータもある程度使えなければ仕事にならない。今後は教育の時間がもっと延びて、進んだ技術を習得した上で効率よく働く、そういう未来になると思います。

 いずれにしろ、昔と比べて今の方がずっと生活は豊かになっているはずなんです。技術を学ぶという手間を面倒臭いとか怖いとか思わず、楽しんで勉強してもらえばもっと明るい未来が広がっていくと思います。人間は多様で状況もそれぞれですから、その多様さを支援するためには多様なメディアや技術が必要で、ロボットもその一つになると思っています。

未来を担う若者たちへ

 広瀬 人工知能やロボットなどが進化し、人間が考えることや仕事をだいぶ代わってやってくれるような時代になってきたと感じます。加えてIoTやビッグデータの活用など、これまでとは違う世の中の流れは「第四次産業革命」とも言われていますが、大分県でも新しい技術をしっかりと取り入れ、活用していくことが大事になると考えています。

石黒 人工知能やロボットは、昔に比べて姿形だけでなく視覚や聴覚といった機能がだいぶ人間に近づいてきました。それで、より自立性が進んだ技術やシステムが世の中を変えるんじゃないかという期待を随分抱いてもらえるようになった気がしますね。

広瀬 そういう意味では、多くの人がいろいろな分野から集まらないと、ロボットの研究は進んでいかないんですね。

石黒 そうですね。ロボットは、簡単に言うとコンピュータにセンサーとアクチュエーターを組み合わせた物ですが、今までバラバラだった物を集めて複雑な物に仕上げていくので、コンピュータを作るよりも3倍、4倍の手間がかかります。だから、単にプログラムを書けるだけではなく+αで他にも何かできる、ロボットの分野では特に複数のことができる人が必要になってきているように思います。

広瀬 だからこそ、いろいろな人材を育てなきゃいけないと。石黒さんは、未踏の分野に切り込んでいけるような破天荒な人材を選び、見つけ出して、育てていく国の「未踏IT技術人材発掘・育成プロジェクト」に携わっているそうですね。

石黒 僕のような大学教員をはじめ、企業の社員やベンチャーキャピタルをされている方など、いろいろなプロジェクトマネージャーが若い人にアドバイスを与え、チャレンジしやすい環境を作って、伸びる芽にはどんどん伸びていってもらう、大学の中ではできないことを外に出てきて取り組む、そういうプロジェクトですね。テーマありきの応募ではなく、応募してきた人がそれぞれにテーマを持って取り組むので、すごく成果が上がっていますし、重要な取組になっていると思います。

広瀬 新しい時代の人材育成の手法かもしれませんね。最後に大分県の若い人たちに一言お願いします。

石黒 僕がどうしてロボットに取り組むようになったかというと、人とは何かという深い興味を持っていたからです。会社で働いている人も、最終的には人が喜ぶ商品を作りたい。政治家も人のために何かをしたいと、全ての社会の仕事はみんな人に向いているんです。だから、人に深い興味を持っていただければ、いろんな自分の可能性も引き出せるんじゃないかと思います。

広瀬 最先端技術に携わる石黒さんが、その根源に人への関心を持っているということですね。今日は本当にありがとうございました。

(1月2日放送OBS新春特別番組要旨)

<Geminoid HI-2>
ジェミノイド™HI-2は、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
石黒浩特別研究所により開発されたものです。

<Telenoid>
テレノイド™は、大阪大学と国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
石黒浩特別研究所により共同開発されたものです。

<Hugvie>
ハグビー™は、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
石黒浩特別研究所により開発されたものです。


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