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佐藤知事 今回は、サンリオエンターテイメントの代表取締役社長 小巻亜矢さんと「大分県の観光振興や地域課題」について話を進めます。
大分には何度もおいでいただいていますが、印象はいかがですか。
小巻社長 大分県は観光はもちろん、食、アート、スポーツ、障がい者支援も本当に進んでいて、尊敬の念を抱いています。また、一緒にやりたいなということが次から次へと出てくるようなイメージを持っています。
佐藤知事 小巻社長は、東京都のご出身で、1983年にサンリオに入社されました。そして、2013年には東京大学の大学院、教育学研究科の修士課程を修了されたと伺っています。
2014年からサンリオエンターテイメントの顧問、取締役などを経て、2019年6月に社長に就任されました。サンリオピューロランドとハーモニーランドの二つのテーマパークの事業の立て直しにもご尽力されました。
小巻社長 サンリオの「みんななかよく」という理念に心から共感し、いつもモチベーション高く、女性活躍支援の企業内ベンチャー立ち上げなどをしていたものの、テーマパークの代表を担う日が来るとは思っていなかったですね。
テーマパーク事業は、2014年頃当社を含め非常に厳しい時代でした。ただ、部署を超えたコミュニケーションやアイデアを体現していけばよくなるのではと思い、レポートにして提出しました。その結果、女性のあなたがやってみるのはいいかもしれないねとお話をいただきました。現場の一人ひとりがすごく考え、アクションを起こしてくれたおかげで、今日まで務めることができています。
佐藤知事 ご活躍が評価され、経済誌フォーブスの2020年「アジアで影響力のあるビジネスウーマン」25人に選ばれました。
小巻社長 女性が活躍しづらい時代に、家族が突然亡くなったうえに、離婚してこども2人を抱えながら仕事に復帰し、その後学び直したり、女性特有のがんの罹り患を乗り越えて仕事を頑張っているというこれまでの私の姿が共感されたと伺っています。もしこれらが女性の皆さんの勇気につながるとしたら、非常にうれしいことだなと受け止めました。
佐藤知事 企業の経営責任者として心がけておられることがあれば、ぜひ教えていただけると。
小巻社長 テーマパーク事業はいろんな仕事で成り立っていますが、経営者として自分が全て分かっているとは思えないんですよね。まず働く人に聞き、その答えから豊富なアイデアやディスカッションが生まれることで、生産性の向上につながっていると感じています。
佐藤知事 なるほど。
大分県も女性活躍応援県として取組を進めていて、例えば「おおいたキャリエール認証企業」は女性の管理職の割合が高い企業などを認証して、さらに女性が活躍できる職場環境整備を後押ししています。サンリオエンターテイメントと一緒に女性活躍のシンポジウムやSDGsなどの取組を行えているのは大変ありがたいです。
小巻社長 県庁の皆さんと女性活躍のイベントや情報交換を行ってきたので、これからも県内で女性活躍支援の活動がご一緒できればと思っています。
佐藤知事 女性活躍で特に大事なことやビジョンなどはありますか。
小巻社長 ジェンダーに対して各企業も関心を持っていると思います。クォーター制を導入し、管理職の女性比率を何%とするなどの指標を設けるのも非常に有効な手段の一つです。
ただ、大切なのは、人前に出て物事を進めることが得意な人もいれば、縁の下の力持ちが得意な人もいるので、最終的には個人のウェルビーイングを互いに理解できる社会をつくっていくことかなと思っています。
佐藤知事 サンリオエンターテイメントの事業について教えていただけますか。
小巻社長 サンリオキャラクターに会えるテーマパークの運営です。来年35周年を迎えるハーモニーランドは屋外施設で、観覧車や乗り物があり、ショーやレストラン、お買物も楽しめます。東京のサンリオピューロランドは全天候に対応できる屋内型テーマパークで、屋内型と屋外ファミリー型の二つの施設を運営しています。
なぜ、サンリオが大分にとよく聞かれますが、県とサンリオなどによる第三セクターとしてハーモニーランドがスタートしました。今では私どもで運営をしていますが、そういうご縁があり、県庁の皆さんとは情報交換しながらご協力やご支援をいただいています。特に昨今はSDGsの取組で幼稚園や大学など産官民学の方とつながっているのが、一番の特徴かなと思っています。
佐藤知事 昨年の暮れにサンリオとサンリオエンターテイメント、県の三者で包括連携協定を結びました。その中身は、SDGsの推進や女性活躍、地域振興など、どれも大事なテーマで、非常に心強く感じています。
小巻社長 こどもの健全育成、女性活躍支援、大学生と共に地方創生など、今までもやってきたことと、スポーツや芸術の項目も入っています。障がい者支援などもご一緒させていただきたいです。いろいろな切り口でつなぐ役割をキティができたらと思っています。
今、全国各地の空港がいろいろな愛称を持っていますが、大分空港にもハローキティの名前がついたら、インパクトもあっていいなと思っています。観光、インバウンドも一緒に頑張っていきたいです。ハーモニーランドのリゾート化も少し見据えての包括連携協定ですが、大分県、そして九州全体、ひいては日本全体にとってすてきな場所ができたねと言われるようなリゾート施設にしたいです。
佐藤知事 サンリオのキャラクターは世界的に有名ですよね。昨年、カナダにあるプリンス・エドワード島という赤毛のアンの舞台になったところで「グローバル・サステナブル・アイランズ・サミット」があり、本県からの参加者が現地の方へ、ぜひ大分にもお越しください、キティちゃんのいるテーマパークもあるところですと伝えたところ、たいへん関心を示していただいたとのことです。
次に、県内の観光のデータですが、コロナ禍のときに国内・海外ともに観光客が大きく減りました。令和6年に入ると、コロナ前の水準まで戻り、海外からはコロナ前よりも多くなっています。また、1人当たりの消費額がコロナ前よりも高くなっています。
ハーモニーランドの利用者の傾向はいかがですか。
小巻社長 コロナ禍のときに本当に厳しい状況になりましたが、割と立ち戻りが早く、韓国からのお客様がまず戻り、今ではコロナ前よりお客様も増えてきています。
私どもの施策の効果もあり、以前は小さいお子様を連れたファミリー層が圧倒的に多かったんですが、今は関東圏、九州の若い女性が非常に増えており、物販、グッズの売上げがコロナ前に比べ1.5倍ぐらいに伸びています。
今はデジタル上でいろんなことが満たされてはいるものの、自分の好きなキャラクターに会いたい、一緒に写真を撮りたいというニーズが非常に高まっていると実感しています。
佐藤知事 テーマパークはよりリアルに楽しめることで、どんどん人気が高まっているということですかね。
小巻社長 特にアジアではサンリオのキャラクターはとても人気があると言われています。ハーモニーランドは、さらにアジアからたくさんの人に来ていただける可能性があり、県と一緒に頑張っていきたいと思っています。
佐藤知事 観光産業は裾野も広く働いている方も多いですし、地域の元気や魅力に直接関わる、すごく大事な産業だと思います。
昨年はデスティネーションキャンペーンで大分、福岡へ行こうと全国のJRグループ各社が発信して、観光客も随分増えました。
小巻社長 多くの観光客が訪れるいいきっかけをいただきました。
私どもはインバウンドを取り込むため、まずは現地に赴いて旅行博でPRしています。今はデジタル上のプロモーションがメインになるので、現地で影響力がある方による情報発信、受入体制はデジタルツールによる多言語化やデジタルマップの工夫に注力しています。
佐藤知事 多言語対応などは進んだかなとは思ったんですが、やはりまだ十分でないところもあると思います。より一層おもてなしができる環境をつくるのも大きな課題ですね。
大分県は、湧出量と源泉数が日本一の「おんせん県」ですが、ハーモニーランドから別府の地獄めぐりは車で大体30分以内で行けます。他にもデスティネーションキャンペーンで非常に大きな効果があったので、大分から福岡に行ったり、その逆だったり、そういうルートの提案も大事ですね。
それから、特に欧米の皆さんはサイクルツーリズムやアドベンチャーツーリズムを好む方もいますし、南欧の方はキリスト教の史跡を歩いて回る方がたくさんいます。例えば、国東半島の両子寺や富貴寺、宇佐神宮などを巡っていただくとかですね。
そして、おいしいものと、酒蔵がたくさんあるので、お酒とおいしい食を組み合わせたガストロノミーツーリズムの提案もすごく魅力的だと思います。
小巻社長 寺院巡りもそうですし、大分は土地そのものに魅力があります。食でいうと、魚も肉も野菜も、私の大好きなしいたけ、カボスなど、多くの方に知っていただきたいです。
ハーモニーランドは公共交通の問題もあって夕方5時ぐらいで閉園しています。ハーモニーランドに長期間滞在して、別府八湯や湯布院、国東、パワースポット、アートなど、魅力的なところを巡る、その窓口となって、ご案内役をうちのキャラクターが担えたらと。言葉の壁があっても「キティって温泉だよね」みたいなことができるなと思っています。
佐藤知事 公共交通はやはり課題だなと。道の整備も含めて、円滑に動ける環境を整えるのもすごく大事だなと思います。
また、大分の魅力を大阪・関西万博で世界に発信できればと思います。合併前の旧町村ごとに誇れるもの、地域の宝を冊子にまとめ、万博の会場で発信する準備をしています。新たな地域おこしのツールの一つになるとありがたいなと思っています。
小巻社長 万博はものすごく大きなチャンスでもあるので、すばらしい企画だと思います。
佐藤知事 また、日本で唯一となるホーバークラフトの就航ですが、窓も前より大きいので、別府などの風景も楽しむことができます。これも魅力の一つになればありがたいです。
あわせて、空飛ぶクルマも、各社が実用化に向けて取り組んでいます。安全をしっかり確保しながら、ホーバークラフトに乗ったり、空飛ぶクルマで遊覧飛行したりが、近い将来にはできるんじゃないかと思います。そういうものを楽しみながら、キティちゃんに会いにたくさんの方が来るといいなと思っています。
小巻社長 ホーバークラフトは空港から大分までが近くなる、空飛ぶクルマも夢があります。安全が確保された暁には、ぜひ別府、大分の上を、空飛ぶクルマが飛んで、みんながキティに会いに来てくれたらうれしいなと、キティと楽しみに待っています。
佐藤知事 今日の対談いかがでしたか。
小巻社長 大分県は魅力の多い県だなと実感しました。
これから会社を発展させていく上で、忘れてはいけないのが人権問題や環境問題です。特にハーモニーランドで頑張っていく身として、環境のことはしっかりと考えながら進めていきたいです。
今回の対談で、観光、SDGs、女性支援も、まだまだ大分県と共にやっていけそうなことがたくさんあるなと感じました。2025年もどうぞよろしくお願いします。
佐藤知事 みんな笑顔で元気に活躍できる社会をつくるのが自治体の大事な役割だと思います。そのためには、たくさんの方と連携や協力をしながら進めていきます。引き続きよろしくお願いします。
今年は万博の開催と同時に宇佐神宮御鎮座1300年の年です。県内には、歴史のある魅力的な神社、寺が多いので、そういった大分の魅力の発信の取組も進めます。
今回は、ありがとうございました。
小巻社長 ありがとうございました。